株主優待は雇われ経営者が自分の地位を守るためのもの

株主優待は雇われ経営者が自分の地位を守るためのもの

株主優待の季節

5月から6月にかけての時期は株主優待の季節です。これは、3月の年度末に権利確定し、その2~3ヶ月後に発送となる企業が多いためです。現物株を幅広く購入している人は、日々届く株主優待品で部屋が溢れているのではないでしょうか。

かくいう私も、 特に優待銘柄を選んで購入しているわけではないのですが、結構な量の株主優待品をいただいています。書斎にも台所にもダンボールが溢れかえっています。金券類はまだ良いのですが、食品など期限のあるものは消費しきれない分をお裾分けしたりと手間もかかります。 意識的に優待銘柄を選んで投資している方は、もっと大変なことになっているのでしょう。

こうなるのは、そもそも株主優待を実施している企業が多いためです。野村インベスター・リレーションズの調査によると、上場銘柄の37.2%が株主優待を実施しているので、少し株式を持っているだけで株主優待品が溢れてしまう状況も頷けます。

不思議な株主優待

改めて考えてみると、株主優待というのは不思議な仕組みです。利益を株主に還元するのならば単に配当金を出せば良いだけです。企業の宣伝だというのならば、株主に限定せずに見込み客に広く試供品をばらまく方が効果的です。株価を上げたいのならば、もっと真っ当な方法がいくらでもあります。

では、なぜ多くの経営者が株主優待の導入に踏み切っているのでしょうか。

株主優待の意味

株主優待の本当の目的は、雇われ経営者が自分の地位を守ることです。雇われ経営者にとって最大のリスクは、苦労して掴んだ現在の地位を追われることです。このリスクを下げるのに、株主優待は実に効果的な方法です。

会社の浮沈は株主にとっては大問題ですが、雇われ経営者にとってはさほど大きな問題ではありません。会社に大儲けをさせてもおこぼれとしてちょっとしたボーナスをもらえるだけです。逆に会社を傾けてしまえば株主に追求されてその立場を追われることになりかねませんが、ここで株主優待が効いてきます。

株主優待は、保有株式数に比例してもらえるわけではなく、一般に小口の株主ほど割が良い仕組みになっています。すなわち、株主優待は小口の株主を増やす方に作用します。小口の株主の多くは個人の泡沫投資家で、物言わぬ株主です。大半は株主総会など出たこともありませんし、業績が多少悪化しても優待が継続する限り保有し続ける方針の株主も珍しくありません (株主向けのアンケートが保有方針を問うていることが多いのは、このあたりを探りたいのでしょう)。

しかも雇われ経営者にとって嬉しいことに、株主優待は会社のお金で堂々と自分の地位を守れるのです。決して自腹を切るわけではありません。これだけ経営者にとって美味しい株主優待が普及するのは当たり前のことです。

優待株に投資するのならば、このあたりの事情を汲み取った上で、それでも得と言えるものを選ぶ必要があります。

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