いつか必ず発生する暴落にどう対処するか
資産運用を長く続けていると、いつかは必ず暴落に遭遇します。これを書いている2020年3月も、コロナウィルスの流行を契機とした暴落が始まっています。
2008年のリーマンショック以降しばらくは暴落が少ない安定局面が続いていました。2015年にはチャイナショックがありましたが、中国株に入れ込んでいた人を除けば影響は限定的でした。そのため、最近資産運用を始めた方には暴落へ遭遇したことがない方も多いはずです。
たとえ長期投資のつもりで投資を始めたとしても、実際に暴落を目の当たりにすると平静ではいられません。暴落の経験がない人は、今後発生する、もしくは今起きようとしている暴落とどの様に向かい合えば良いのでしょうか。
暴落時に決してやってはいけないこと
まず、対処方法を考える前に、決してやってはいけないことがあります。それは、狼狽売りです。
値下がりの恐怖に耐えられずにせっかく積み上げてきた株式を手放してしまう。そして少し値が戻ったところで市場が落ち着いたと早合点して買い戻す。その直後に再度下落し、結果として高値掴みになってしまう。耐えられずに再度売ると今度はグングン上昇していく。狼狽売りは、そんな悪循環の入口です。
もちろん、今後は下落トレンドになると確信できるような能力がある方が売りに出るのは問題ありません。これは、恐怖に耐えられずに手仕舞いするのとはまったくの別物です。しかし、そんな能力のある人は一握りです。
では、狼狽売りをしないためには、どういった心構えや技術が必要なのでしょうか。
そもそも投資額が多すぎないか
暴落に恐怖を感じるのであれば、まずはそもそもの投資額が多すぎないかを見直すべきです。
このあたりは感覚の個人差が大きいところですので、一概に投資は全資産の何割までといったことは申し上げられません。手持ち資産のすべてを株式に投資したままでもぐっすり眠れる人もいますし、資産の数パーセントを失っただけで平静を保てない人もいます。ただひとつ言えるのは、暴落が起きた時の自分を想像して耐えられないと思うのならば、その投資額が多すぎるということです。
私は資産の過半を株式に投資し、常にポジションを持っていますが、暴落時でもさほど恐怖を感じることはありません。これは投資をする上で非常に恵まれた能力ではありますが、生まれつきの才能ではありません。小さな暴落を何度も体験して得た経験や長期に渡る市場の歴史の勉強により築き上げたものです。暴落は一時的なものであり市場は常に復活してきたことを知っているからです。
長期チャートを見直す
多くの場合、恐怖の原因はその実態が見えない不安です。暴落の最中、この先どこまで下がるか底が見えない、株価が戻るまでに何年かかるかが見えない、そんな不安が恐怖の源です。
この種の恐怖を克服するためには、長期チャートを見直すことです。例えば、10年20年の値動きというスケールから見ると、多くの暴落は些細なものです。瞬間的には大暴落に見えても、高々ここ数ヶ月や多くとも数年程度の値上がり益が吹き飛んだだけです。また過去の大暴落のチャートは、耐えて持ち続ければいずれかは株価が戻ることを教えてくれます。あのリーマンショックですら、数年で値を戻しています。
投資したときの考えを再確認する
どのような考えで投資したかを思い出すのも効果的です。あなたが長期投資家であるのならば、投資を決めたときは「細かな値動きは気にせずに10年は持ち続けよう」と決心したのではないでしょうか? またその際には、ある程度の確率で暴落が発生することも織り込んでいたのではないでしょうか。
投資をする際に、将来予想をきちんとする一番の理由はこの点にあると考えています。将来の予測が難しい市場のこと、予想をしてもしかたないという考えの方もいます。しかし、投資先の市場が過去にどの程度の確率で危機に陥っているのかを知ることは、実際にそういった局面に出くわした際の対応に大きく影響します。想定の範囲内として冷静に行動できるか、パニックに陥るか。事前にかけた労力は裏切りません。
気絶投資法
自分の精神力に自信がない方は、いっそのこと株価や関連ニュースに触れない生活をするのも手です。投資ルールを決め定期的な積立投資を設定したら、あとは証券会社のページを開きもしないという、いわゆる “気絶投資法” です。
もちろん、急な事態に対応できないというリスクは生まれます。しかし、そもそも暴落時に冷静に正しい対応ができるのでない限り、下手に動くよりは放置して気がついたら暴落から回復していたという方がはるかに良い結果を招くはずです。
心を揺らさない鍛錬としてのギャンブル
ギャンブルと聞くと眉をひそめる方も多いものと思います。パチンコ、競輪・競馬、麻雀。いずれも悪い印象を持っている人が多いでしょう。これらのギャンブルはお金を失うのに加えて、時間を浪費するという意味でも嫌われています。
まるで百害あって一利なしのようなギャンブルですが、一つだけ利点があります。それは、投資をする上では避けられない損に耐える精神を養えるということです。それも、比較的小さい負けで、です。
多くの著名なトレーダーがギャンブルでもその才能を発揮していることはよく知られるところです。かのウォーレン・バフェットは若い頃の一時期、競馬に熱中していました。トレーダーのcisは麻雀に目がありません。ウォール街では、今も昔もポーカーが重要な位置を占めています。
かくいう私も一時期は麻雀にのめり込んでいました。幸いにして平均以上の腕前があり収支はプラスでしたが、それでもランダム性の高いゲームのこと、半荘数回という単位では負けがこむことも珍しくありません。そんな含み損があるときでも、期待値はプラスであるという事実を知っているからこそ冷静に打ち続けることができ、それが胆力につながったと考えています。