不確実性と向き合うライフプラン

不確実性と向き合うライフプラン

さまざまなライフプランサイト

世の中にはライフプランを診断してくれるサイトが多数あります。適当な検索エンジンで “ライフプラン” と入力するだけで、さまざまなライフプラン診断サイトが溢れ出してきます。著名な業界団体が作成した主要なものを抜き出しただけでも以下のものがあります。

他にもさまざまな銀行や保険会社などが類似のツールを提供していますが、似たり寄ったりですのでこのくらいで十分でしょう。いずれも立派な作りですが、一皮剥くと中身は画一的です。

これらのライフプランサイトの多くは対象とする人物像が非常に絞り込まれており、それから少しでも外れる人にはほとんど役に立ちません。具体的には、正社員として年金受給開始年齢前後まで働き続け、資産の積極的な運用は行わないサラリーマンです。この種の人物であれば、現在の収入と支出、将来の大きなイベントさえ分かればあとは四則演算だけで未来が見通せます (本当は職を失うリスクなども考えなければいけないのですが、これらのライフプランサイトはそれを無視しています)。ところが、十分な資産を持ってアーリーリタイアを達成し、金と暇のある暮らしを送れるかを検討するには力不足です。

アーリーリタイアに特化したシミュレータ

こうした背景があってか、アーリーリタイアを目指す人々はそれに特化したシミュレータを利用することが多いようです。有名どころでは以下のあたりでしょうか。

いずれも極めて実践的な “わかっている人” 向けのサイトで、自身の資産総や支出を把握できていることが前提です。こうした人々には非常に有用なツールなのですが、ここで問題となるのが資産運用の利回りをいくらに設定するかです。というのも、この利回りのさじ加減一つで将来計画が大きく変わり、アーリーリタイアの場合は金と暇に溢れる暮らしを送れるか路頭に迷うかの差を生みます。過去の実績から利回りを算出できたとしても、その振れ幅を考慮せずに固定値とみなすのはあまりに危険です。

では、アーリーリタイアを目指す人々は、この利回りの不確実性とどのように向き合えば良いのでしょうか。

米国のライフプランサイト

民間の株式投資やアーリーリタイア思想の本場である米国では、ライフプランサイトもそれを反映しています。

一例として、Vanguardの提供するRetirement Nest Egg Calculatorがあります。これは一見簡素なサイトで、入力する情報もシミュレーション期間、資産、年間支出、資産配分 (株、債権、現金の比率) のみです。ところがシミュレーション結果を見ると、将来の単純な資産額の推移ではなく、年ごとの資産持続確率や資産額の予想レンジが表示されていることに気付きます。これは内部的にMonte Carlo Simulationを行っているためで、株や債券の利回りを過去のデータから複数回ランダムに選択して集計した結果を見せています。好景気にリタイアできた場合は金と暇のある優雅な生活を送れますが、第一次オイルショックによる暴落が起こった1973年にリタイアした場合は苦しい生活を余儀なくされるでしょう。このシミュレーションでは、それらのさまざまなパターンをもとに、資産額の幅を算出しています。

実はこの種のシュミレーションはRetirement Nest Egg Calculatorの専売特許ではなく、さまざまなサイトが同様のシミュレーションを提供しています。残念ながら、いずれも米国内でドルで生活する人々を前提としているため、日本人がアーリーリタイアを検討するためには一工夫が必要です。それでも利回りの不確実性と向き合ったシミュレーションは、将来の不安を潰す助けになるはずです。

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