Big Three/Five Questions
金融リテラシを測る基本的な質問として、Big Three QuestionsやBig Five Questionsが知られています。これは、Annamaria LusardiとOlivia S. Mitchellが2004 Health and Retirement Study (HRS) で使用した三つの基本的な質問 (Big Three Questions) に端を発しています。その後、2009 National Financial Capability Study (NFCS) で新たに二つの質問が加えられ、これらがBig Five Questionsと呼ばれるようになりました。この質問群はその後もさらに各種の研究で広く使用され、日本の金融広報中央委員会の実施する金融リテラシー調査にも邦訳されて組み込まれています。
日本語版Big Five Questions
以下がそのBig Five Questionsの邦訳です。いずれも金融リテラシー調査で使用された訳を引用しています。ただし、オリジナルでは1つの問題であったQ1が二つに分割・再編されているため、便宜上Q1-a, Q1-bとして記載しました。
ある程度金融リテラシのある方には簡単過ぎてむしろひっかけ問題のように感じるかもしれませんが、どれも素直な問題です。自分で解いてみたい方のために、解答は記事の末尾に記載しておきます。
- Q1-a: 100 万円を年率 2%の利息がつく預金口座に預け入れました。それ以外、この口座への入金や出金がなかった場合、1 年後、口座の残高はいくらになっているでしょうか。利息にかかる税金は考慮しないでご回答ください。
- Q1-b: では、5 年後には口座の残高はいくらになっているでしょうか。利息にかかる税金は考慮しないでご回答ください。(1 つだけ)
- 110 万円より多い
- ちょうど 110 万円
- 110 万円より少ない
- 上記の条件だけでは答えられない
- わからない
- Q2: インフレ率が 2%で、普通預金口座であなたが受け取る利息が 1%なら、1 年後にこの口座のお金を使ってどれくらいの物を購入することができると思いますか。(1 つだけ)
- 今日以上に物が買える
- 今日と全く同じだけ物が買える
- 今日以下しか物が買えない
- わからない
- Q3: 次の文章が正しいかどうかをご回答ください。(1 つずつ)
- 1 社の株を買うことは、通常、株式投資信託(※)を買うよりも安全な投資である
- ※何社かの株式に投資する金融商品
- Q4: 次の文章が正しいかどうかをご回答ください。(1 つずつ)
- 住宅ローンを組む場合、返済期間が 15 年の場合と30 年の場合を比較すると、通常、15 年の方が月々の支払い額は多くなるが、支払う金利の総額は少なくなる
- Q5: 金利が上がったら、通常、債券価格はどうなるでしょうか。(1 つだけ)
- 上がる
- 下がる
- 変化しない
- 債券価格と金利の間には何の関係もない
- わからない
金融知識のある方が見れば一目瞭然ですが、各問題が複利、インフレ、分散投資、住宅ローン、債券価格を問うており、基本的な金融知識が幅広く押さえられています。
日本人の正答率
気になる日本人の正答率は以下の通りです。いずれも2019年のる金融リテラシー調査の結果です。なお、調査対象は日本の人口構成とほぼ同一の割合で収集した18-79歳の25,000人で、インターネットによるアンケートで回答を得ています。
- Q1-b (複利): 43.6%
- Q2 (インフレ): 55.1%
- Q3 (分散投資): 47.3%
- Q4 (住宅ローン): 70.3%
- Q5 (債権価格): 23.8%
一見して住宅ローンの正答率が高いことが目に付きます。持ち家信仰の強い日本人にとって馴染みの深い問題なのかもしれません (実は米国の調査でも正答率が高い方の問題ですが)。一方、債権価格の変動は知らない人にとってはまったく見当がつかない問題であるようです。複利、インフレ、分散投資といった投資家にとっては当たり前といえる問題も、一般にはさほど馴染みがあるものではないことがわかります。
もちろん性別や年齢層によって、正答率には多少の開きがあります。また、回答票が公開されておらずクロス集計もできないため、Big Five Questions全体の正答率を算出することはできません。しかし、一般的な傾向としてこのBig Five Questionsに全問正解できた方は日本人の平均以上の基本的な金融リテラシを備えているものと言えます。
日本語版Big Five Questionsの解答
- Q1-b: 1. 110 万円より多い
- Q2: 3. 今日以下しか物が買えない
- Q3: 間違っている
- Q4: 正しい
- Q5: 2. 下がる
参考文献
- Justine S. Hastings, Brigitte C. Madrian and William L. Skimmyhorn, “Financial Literacy, Financial Education and Economic Outcomes,” NBER Working Paper 18412, 2012.
- Lusardi A, Mitchell OS, “Financial literacy and planning: implications for retirement welling”, 2006.
- FINRA Investor Education Foundation, National Financial Capability Study.
- 金融リテラシー調査2019年調査結果