新たな投資対象、仮想通貨
bitcoinをはじめとする仮想通貨 (現在は暗号資産と呼ぶのがより適切ですが、ここでは広く使われている仮想通貨の語を使います) が、株式・債権・不動産・金などに続く新たな投資先として浮上しています。分散投資を心がける投資家としては、投資対象が増えることは喜ばしいのですが、未だ仮想通貨の購入に至っていません。
本稿では、その購入に至っていない理由を述べます。詳細は個別の理由を読んでいただきたいのですが、一言でいうと自分の投資思想に合わないという意味での「投機」であり、将来利益を生むかがあまりに不透明なためです。 以下に述べる理由に比べると、値動きが激しいことなどは些細な問題です。
仮想通貨自体は利益を生まない
第一の理由として、仮想通貨自体は利益を生まないということが挙げられます。現代の主要な投資である株式や債券は、企業が生む利益がその裏付けとしてあります。不動産もそれ自体が賃料などの収入を生み出します。しかしながら、仮想通貨はそれ自体が利益を生むことはなく、その価格の裏付けがありません。強いて挙げるならば決済手段の提供が仮想通貨の価値と言えますが、未だに仮想通貨で支払いができる店舗などがほとんどないことはご存知の通りで、せいぜいマネー・ロンダリングに活用されている程度です。
それ自体が利益を産まないという意味では、その性質は金に似ています。金も、多少の産業利用などを除けば、それ自体は利益を生みません。そのため、長期視点で見ると金の利益は株式や債券に大きく劣後します。仮想通貨も長期的には金と同程度の収益に収束すると考えます。株式や債券とは値動きが異なるため、リスクヘッジとしての意味はありますが、あまり積極的に投資したい対象ではありません。
国家に楯突くものである
国家の権力の源の一つとして、通貨発行権があります (厳密には中央銀行やFRBが通過発行を担っていますが、本題ではないのでここでは深入りしません)。これは非常に強力な権利であり、歴史上この通貨発行権を巡っての争いが幾度も起きています。
仮想通貨は、意図してか意図せずかこの通貨発行権を国家から奪おうというものです。言い換えると、国家に楯突くものです。中には無政府資本主義を理想としていることを公言している人物もいます。この敵対関係を維持したまま、長期に渡り成長を続けられるようにはとても思えません。現に中国では仮想通貨のマイニング禁止令が唱えられており、国家の匙加減一つで潰されるリスクが否定できません。
税制面で非常に不利である
上述の国家との対立と深く関係しますが、日本での税制上、仮想通貨は非常に不利な扱いを受けています。株式や債券の税制とは比べ物にならず、他の法定通貨との取引である外国為替証拠金取引 (FX) よりもさらに不利な税制です。国家との対立を続ける限り、この税制が改善されることはありません。
国税庁の “仮想通貨に関する税務上の取扱いについて” によると、仮想通貨の利益は総合課税の対象となる雑所得となり、税の分類として最も不利な枠に入ります。具体的には以下の不利益があり、株式や債券を多少上回る利益が出ても、とても割に合うものではありません。
- 雑所得のため、他の所得と損益通算できない
- 総合課税のため、給与所得などと合算される上に累進課税が適用される
- 損失を繰越控除できない