自問してみてください
今、生活のために仕事をしているという人は、一度自問してみてください。今の仕事をやめても収入が変わらないとしたら、その仕事を続けますか。
その答えが「Yes」であるという人はとても幸せな人です。おそらく、天職と言える仕事についており、職業の道楽化を達成しているのでしょうから。中には、今の仕事で得られる社会的地位や役得が魅力的だという方もいらっしゃるかもしれませんが、それも幸せな人生を送れているものと思います。ここで唐突に『職業の道楽化』という言葉を持ち出しましたが、これは本多静六が著作の中で用いていた言葉です。仕事を心から楽しむことで、その楽しみ自体が報酬となり、さらに仕事が上手になる。そんな最高の循環を意味しています。
一方、答えが「No」という方は、おそらくお金のために働いている人です。一度きりの人生でそれは非常にもったいないことです。ここで取れる方法は二つです。その仕事を心底好きになり『職業の道楽化』を達成するか、十分な金と暇を確保してやりたいことをやる人生を送るか、です。
私は幸いにして「Yes」と答えられる環境にいます。これも、研究職を道楽と言えるまで楽しんでいるからこそです。しかしながら、企業勤めのサラリーマン研究者という立場上、その仕事がずっと保証されているわけではありません。組織の都合により研究職を続けるのが難しくなった折には、企業を離れてやりたいことだけをやる人生を送るつもりです。
仮定ではなく、現実の話として
さてここまで、仕事をやめても収入が変わらないとしたらという仮定の話をしてきました。もちろん、現実に働かなくても働いたのと同じ賃金を払おうという奇特な経営者などそうそう見つかるものではありません。しかしながら、十分な資産を構築した人間にとっては、仮定ではなく現実の話として映るものです。
私はすでに仕事をやめても家族で生活するのに困らない程の資産を構築していますが、この段階に達すると、仕事をする上での選択基準が変わってきます。成功すれば自分の給料を増やすことになるであろう仕事であっても興味が持てなければ同僚に譲り、たとえ無報酬であっても自分が心から望む仕事だけに取り組むことが可能となるのです。現に私は他者の管理などの興味が持てない仕事は極力避け、研究の仕事に集中しています。組織で出世して給料を増やすことが目的であれば、前者のような仕事を積極的に受けていくのが最適解です (本当に出世が収入増に繋がるかは一旦置いておきます)。しかしながら、それによって得られる収入の増加が手元の資産を運用して得られる利益と比較して微々たるものとなると、とてもそんな気にはなれないものです。