誰が言い出したのか定かではありませんが、「50歳になったときの預金通帳があなたのこれまでの人生の通知表」という言説があります。これは雑なようでいて、案外的を得ているものです。
お金だけで人生の成否を判定するという考え方には抵抗がある方もいるかもしれません。しかしながら、社会に貢献できる人生を送ってきた人には適正な利益がついて回るものです。それによって幸せになる人々がいるからこそ、ビジネスの成功や高給を得られる仕事があるのです (もちろん、犯罪的なものは除きます)。一見すると直接的な利益につながっていないような分野、例えば基礎研究であっても同じことです。それが職業として成り立っているのは、それに投資する価値があると考えている人がいるからこそです。
もちろん、お金以外にも人脈であったり健康であったりと人生には大事なことがたくさんありますが、それらをいちいち数値に換算するのは容易なことではなく、もっとも手っ取り早いのが預金通帳の金額なのでしょう。なお、ここでの預金通帳というのは例え話で、実際には証券口座などの金融資産も含めた金額を見るほうが実態に近いでしょう。特に通知表が5に近い人ほど、預金以外に様々な資産を持っているはずです。
50歳という年齢も絶妙です。10代や20代の時点では資産額にそう大きな差がつくことはなく、大きな試算を持っていたとしても実家の豊かさや僥倖に恵まれてのものでしょう。例外があるとすれば、スポーツや音楽の才能があった場合ですが、若くして大金を得たあとの人生が本当に幸せなものかを判断するにはもう少し時間が必要です。30代から40代になるとそろそろ人生の成否がうっすらと見えてきますが、まだまだ通知表を出すには早い時期です。この年代には多くのライフイベントが控えており、家計の舵取りや持ち家といった大きな買い物の選択を少し間違えると、生活は容易に破綻します。そんな難関辛苦を乗り越え、ようやく一息つき、さてそろそろ老後の生活を考えなくてはというのが50歳なのでしょう。また少し悲しい現実の話をすると、50歳からの大逆転というのはまず起こらないものです。例外がないとは言いませんが、例外だからこそ面白おかしく取り上げられ話題になるのです。
すでに50歳を超えている方は通知表をもらっているはずですが、まだこれからという方は通知表の予想をしてみることをおすすめします。ライフプランに沿った資産の推移を普段から意識している人ならばさほどの手間もかからずにできるでしょう。もしも検討がつかないというのであれば、落第の心配をした方が良いかもしれません。